トランペットでは世界最高峰のメーカー、シルキーのトランペットマウスピース「14C2」、シルバープレート（銀メッキ仕上げ）です。
ボディには「SCHILKE 14C2」というハンドメイド感あふれる趣のある書体の刻印が、しっかりと深めに入っています。
シルキーのマウスピースは近年度々値上げが続いています。
2022年10月には再度大幅に値上げされて、トランペットマウスピースは現在 定価 14,850円で販売されています。
シルキー「14C2」のメーカー発表の仕様は、
リム内径17.02mm
リム形状SR（セミラウンド = やや丸みを帯びた形状）
カップ容量M（ミディアム = 中くらい）
バックボア標準
「標準のCカップとやや丸みのある2番リムで、芯のある大きな音が出ます。」
と解説されています。
リムのサイズはV.バックの3Cくらいですが、リムの形状がだいぶ違うので感触は異なります。
リムはややラウンド気味な形状で、唇のコントロール性が素晴らしいデザインです。
跳躍を多く含むフレーズなどで、吹きやすさを実感できます。
平らなリムが嫌いな人や、丸っこいリムが好きな人にはとても良い選択になると思います。
リム内側には適度なエッジがあるので、高音域などで少し唇にプレスがかかった時にはしっかりとリップをホールドしてくれます。
リム外側のエッジは、なだらかに落ちる形状になっています。
カップは標準的な深さのボウル型にデザインされています。
ボア（スロート）サイズは♯26（3.73mm）がシルキーの標準になっています。
V.バックなども含めて、トランペットのマウスピースのボア（スロート）サイズは、♯27（3.66mm）が標準的ですが、シルキーのマウスピースはそれよりも0.07mm広いボアを採用している点が興味深いです。
スロートからボア（一番細い部分）に向かって、わずかに円錐状にデザインされているのが、目視でも確認できます。
音色やイントネーション（音程）、吹奏時の抵抗感が最良になるよう、精緻な作りになっています。
バックボアはV.バックの#10スタンダードバックボアに比べるとわずかに広くなっているように見えます。
シャンク先端は薄く繊細に仕上げられています。
シルキーのトランペットマウスピースの全長は、V.バックのものと比べると、1mm〜1.5mmくらい長い仕様になってます。
やや長めの全長と、スロート、バックボア部分も含めて巧みにバランスが取られていて、もちろん息を取られすぎるような感覚はなく、V.バックのマウスピースとは一味違う豊かな響きが魅力的です。
音色はふくよかでリッチな音が遠くまで届く感じで、力を入れすぎなくても音量も得られます。
薄っぺらい感じはなく、良い意味でややダーク気味な魅力的なサウンドで、トランペットらしい輝きも持ち合わせています。
「14C2」は現在でも非常に人気のある型番ですが、1960年代初頭にはすでにシルキーのマウスピースのラインナップの中にあったようで、半世紀以上の歴史がある完成度の高いマウスピースです。
レノルド・シルキー氏（1910年〜1982年）は、1930年代からシカゴ交響楽団のトランペット奏者を務めながら楽器とマウスピースの製作も行い、1950年代には楽器メーカーとして会社を設立します。
のちにはアドルフ・ハーセス氏、ヴィンセント・チコヴィッツ氏、ウィリアム・スカーレット氏らが同時期にトランペットセクションに在籍していて、ラファエル・クーベリック氏やフリッツ・ライナー氏らが指揮をしたその脅威的な伝説時代のシカゴ交響楽団の演奏は現在でもCDなどで聴くことができます。
ボストン交響楽団のトランペット奏者でもあったヴィンセント・バック氏や、同じシカゴ交響楽団のエルデン・ベンジ氏らも、同じく楽器製作と演奏活動の両方を行っていて、お互いに深い親交があったようです。
シルキーの楽器とマウスピースは、アメリカらしからぬ繊細で精密な作りで世界中から絶賛され、その高い品質が現在でもしっかりと引き継がれている点が他のメーカーとは決定的に異なる、素晴らしい楽器メーカーです。
シルキーのマウスピースはビル・チェイス氏やジョン・ファディス氏といったスタープレイヤーも愛用してきて、ロサンゼルスフィル元首席奏者のトーマス・スティーヴンス氏や、のちにマウスピース製作者として有名になるスコット・ラスキー氏、カール・ハモンド氏らも製作に携わってきた長い伝統があります。
全体に非常に良い状態を保っています。ボディのところどころに極わずかな小キズが見受けられますが、ほとんど気にならいと思います。全体の銀メッキの状態も極上で、美しく光り輝いています。
作りは全体にとても丁寧で、シャンク先端の薄く繊細な処理も美しく仕上げられています。
カップから、スロート、バックボア、シャンク先端にかけての仕上げが素晴らしいです。
マウスピースの表面とカップ内からバックボア、シャンク先端まで、綺麗に洗浄して適度に磨いてありますので、汚れなどの心配のまったくない清潔な状態にしてあります。
「14C2」は新品で楽器店に置いていることは少なく、中古でもなかなか出回らない型番なので気になっていた方には入手できる良い機会だと思います。
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