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今井絵美子著「立場茶屋おりきシリーズ(全25巻完結)」ハルキ文庫
「さくら舞う立場茶屋おりき1」2006年11月文庫初版
「行合橋立場茶屋おりき2」2007年3月文庫初版
「秋の蝶立場茶屋おりき3」2008年4月文庫初版
「月影の舞立場茶屋おりき4」2009年1月文庫初版
「秋蛍立場茶屋おりき5」2009年8月文庫初版
「忘れ雪立場茶屋おりき6」2010年10月文庫初版
「若菜摘み立場茶屋おりき7」2011年5月文庫初版
「母子草立場茶屋おりき8」2011年8月文庫初版
「願の糸立場茶屋おりき9」2011年12月文庫初版
「雪割草立場茶屋おりき10」2012年3月文庫初版
「虎が雨立場茶屋おりき11」2012年6月文庫初版
「こぼれ萩立場茶屋おりき12」2012年9月文庫初版
「泣きのお銀立場茶屋おりき13」2012年12月文庫初版
「品の月立場茶屋おりき14」2013年3月文庫初版
「極楽日和立場茶屋おりき15」2013年6月文庫初版
「凛として立場茶屋おりき16」2013年10月文庫初版
「花かがり立場茶屋おりき17」2014年3月文庫初版
「君影草立場茶屋おりき18」2014年6月文庫初版
「指切り立場茶屋おりき19」2014年10月文庫初版
「由縁の月立場茶屋おりき20」2015年3月文庫初版
「佐保姫立場茶屋おりき21」2015年6月文庫初版
「一流の客立場茶屋おりき22」2015年10月文庫初版
「すみれ野立場茶屋おりき23」2016年3月文庫初版
「幸せのかたち立場茶屋おりき24」2016年6月文庫初版
「永遠に立場茶屋おりき25」2016年9月文庫初版
定価640円~670円+税262頁~294頁★著者略歴★
1945年。広島県生れ。成城大学文芸学部卒業。画廊経営、テレビプロデューサーを経て執筆活動に入る。時代小説を書く。1998年「もぐら」で第16回大阪女性文芸賞佳作。2000年「母の背中」で第34回北日本文学賞選奨。2002年「蘇鉄のひと」第二回中・近世文学大賞最終候補作。2003年「小日向源吾の終わらない夏」第10回九州さが大衆文芸賞大賞・笹沢佐保賞受賞。★作品内容★
品川にある立場茶屋”おりき”を舞台にするシリーズ。品川の海に身を投げようとしていた武家娘が、先代に救われ”2代目おりき”と成る。格式の高い旅籠と庶民もちょっと奢れば入れる茶屋(後には、隣に蕎麦や敷地内に孤児の為の養護園)に働く人や子供たちを家族とも思い、その人生の死や別れ、誕生など様々な事を、四季折々の料理と花で彩りながら語ってゆく。
<1>品川門前町にある立場茶屋”おりき”は、庶民的な茶屋と、評判の料理を供する酒脱な旅籠を兼ねている。そこの二代目女将おりきは、美人で情に厚くその上、元武家の出なのか柔術の腕も達者で鉄火肌、店の内外から信頼され慕われている。その茶屋おりきと女将のおりきの廻りで起こる物語が語られてゆく。分けありの女性客の事件や、いなせな芸者、初代おりきの思い出、女親の想い、おりきの過去などそれぞれの話が絡み合いながら物語が進む。「さくら舞う」「涙橋」「明日くる客」「秋の別」「侘助」。
<2>前巻末で転がり込んできた記憶を失った武士・如月鬼一郎(とりあえず、如月の節句に現れた出の呼び名)に寄せる思いや、引き取った幼い双子の兄妹が心無い父親に攫われ、妹のおきちはもどるが、兄の三吉はそのまま行方知らずになり、その捜索や、足抜けの顛末、亀蔵親分の義妹の想い。さまざまな事件が起こりまた一年が過ぎる。気品あふれる女将の一年がまた過ぎる。
<3>如月鬼一郎が現れたときと同じように、またふわっと消えてから半年。二代目女将・おりきはその面影を思い出しながらも時は移る。女衒に売られ、聴力を失くした三吉もしだいに笑顔を見せることも増えてきた。幽霊騒ぎや、のっとり騒ぎ、などの事件もあるが、みんなに信頼される茶屋女将・おりきの一年がまた過ぎる。最後に、おりき茶屋の一部が火事に合う事件もあるが、おりきはしゃっきとして健在。「秋の蝶」「星月夜」「福寿草」「雛の燭」「海お渡る風」。
<4>隣家の火事の類焼で、茶屋が焼けてしまったが、贔屓客や、周りの人々の支えで早くも、茶屋に再建がかないそうだが、それに増しても、奉公人たちの思いに助けた透けられているという思いを強くするおりきだった。物語は茶屋”おりき”を中心に、奉公人や、周りの人々、再建の様子、そして記憶をなくしてふらっと現われ1年過ごした後、またふらっと消えてしまったた如月鬼一郎のその後の話などが語られる。おりきが心を引かれ、今でもその面影が胸にうかぶ鬼一郎の謎が、尋ねて来たその妹によって語られ、もう会うことができないと思い涙する。品川外れの料理茶屋”おりき”を舞台に、出会いと別れ、また時が過ぎてゆく。「雨安居」「月影の舞」「秋の夕」「散紅葉」「風花」。
<5>料理茶屋と旅籠のおりきは、評判もよく順調だが、人の死と成長は時間を待たない。「草萌」耳が聞こえなくなった三吉は。春の兆しの蕗の薹を摘んで帰る。その途中で、目の見えないごぜの少女と出会う。「海に帰る」おきわは、父親の気に入らない結婚をしたまま再開することもなかったが、母の願いで連れ子のおいねと共に実家を訪れる。「白き花に寄せて」おきわに蕎麦屋を持たせたいとその地を持っている芸者を尋ねるがその途中で、主の居なくなった屋敷の庭に惹かれる。「契り」足抜けを助けて、そこの使用人を殺してしまった男を匿う女。男女の関係は、不可思議。「秋蛍」かつて居候していた浪人が夢枕に立つ。哀しい秋蛍の思い。もちろんそれだけではない、時の流れと”おりき”をめぐる人情の移り代わり。
<6>下足番の修行をしていた三吉だが、その才能を見出され京で絵師としての修行をする事になる。双子の妹のおきちはその旅立ちを喜んだが、孫のように面倒を見ていた善助は魂が抜けたようになる。別れに際して三吉は皆に木堀の人形を手渡す。また、店で働く者達もそれぞれの悩みや人生を抱えていた。おりきにもかつて記憶を失って離れに暮らし、思い思われた人の死が知らされる。「忘れ雪」面倒を見てきた子どもの成長と旅立ち。「春の雨」おまきの別れた夫と息子への思い。「梅雨の宿」岡っ引きの親分の義妹・こうめ、そして蕎麦屋を出したばかりのおきわの子どもたちが麻疹に罹り、改めて華族の大事さを思い知る。「夕蜩」おりきに、覚悟していた悲しい知らせが来る。「今日の秋」茶屋の料理人・巳之助に大店の出前調理の話が舞い込む。
<7>品川にある料理旅籠おりき、そこの2代目おりきの心付くし。旅籠と茶屋と、蕎麦屋まで面倒を見るおりきの周りの人々の人情味あふれた物語。「秋ついり」近江屋のお登世が出戻ってきた。いつもは明るいお登世に異変を感じた亀蔵は、おりきにそれとなく探ってくれと頼む。「籠の菊」旅籠の因業な洗濯女のとめ婆さんはかつて遣り手婆を務めていた女郎屋に出戻っていた女郎を見かける。因業婆さんの35年ぶりの涙。「初明かり」大晦日の蕎麦屋はひっきりなしの混雑。新しく釜飯を出した茶屋も大混雑。そんな中、人を待つといったまま半日以上も座っている老女。惚けが入ってきた老女の思いとは。また、蕎麦屋においていかれた童子の行く先。「若菜摘み」訳ありの泊り客の兄妹。実は仇討のたびだったのだが弟が病に倒れm長逗留する事になる。実に気持ちのいい1冊。
<8>また春が来て、来るもの去ってゆくもの、人の世は流れ行く。「母子草」大晦日に置き去りされた子どもの父親が帰ってくる。博打の罪で江戸所払いにされたが品川に残る事もできる。けれど男が選んだ選択は。母を慕う子供と大人の思い。「班猫」雛の節句にあわせて娘の初潮祝をしたいと席を予約した夫婦。けれどその娘は実子ではなく、それを娘が市って抜け出す。「藤の雨」十手持ちの亀蔵の家では、惣菜を1っ品・8文で売る”八問屋”をしていたが、そこに高価な卵を売る少女が遣ってくる。同情して買った卵を生かした料理。けれどそう毎度は買えない、こわもての亀蔵の顔を見て逃げ出す少女。つらい結末に。「蛇苺」亀蔵の義妹の祝言。口が悪く想いがストレートでないこうめだが、やっと幸せに。この間にも板前の料理の数々やその思い、花を卸してくれる老百姓の思い、おりきと、3代目を継がせようと思っているおきちの娘らしい思い、店のみんなの思いなどが繋がって、物語は進む。
<9>「願の糸」前巻ラストで突然襲った地震で、品川も大きなダメージを受けるが、そこで孤児となった3人を受け入れ、養護施設”あすなろ園”を開く。七夕の短冊にかける思いは。”あいたい”。「夏の果」つくだ煮やの主人の還暦の祝いが行われるが、そこで耄碌しかけの七海を大事にする様子を見て、自分の母を隠居所に押し込めていることを反省する。「走り蕎麦」斜め向こうに新しいうどん屋ができてやきもきする”彦蕎麦”のおきわ。そして幾千代の妹分・幾富士が、恋に落ちたようだが、その相手が心配だ。「柳散る」最近耄碌が激しい善爺。立場茶屋おりきに、久しぶりの上得意が来るという知らせ。そしてその共として現れたのは、絵師の修行に京都に出ていた三吉。涙の再会を果たす。
<10>「石蕗の花」門前町の堺屋の後始末。そして、3年ぶりに現れた夫婦なのだが、確かに違う。前に現れた妻ではない。皆が息をのむ。夫婦の思い。「雪割草」善爺を住まわせるために建てたという二階家だが、ついにそこに住むことはなかった。それでも使用人のために建てたのだが、茶の板頭弥次郎は住めないという。実はと打ち分けた話。「花冷え」亀蔵親分の八文屋、おうめと鉄平が切り盛りしているが、近くで安い総菜を打っているという噂。榛名というその女子の災難に生き合わせた亀蔵は。「春告鳥」八文屋のおさわの息子・陸郎が亡くなった。漁師の息子ながらその才能を見出され御家人として武士となったのだが、病に倒れてしまったのだ。その死に目にも会えなかったおさわは、失意に沈む。
<11>「暮れかねる」かつて同じ旅籠に暮らし、先輩として建てていたが、2代目に成れないことを知ったおさわは去って行った。それを知ったおりきはその行方を捜すが。そっとしていた方がいいこともある。「6日の菖蒲」情けをかけることが、いいこととも限らない。時期を一日過ぎれば、捨てるしかない。「虎が雨」同時経営の彦蕎麦の、与一郎が刺されて、生死の境をさまよう。与一郎の過去が明らかになる。いっぽう、病に倒れた真田屋の娘のために。茶屋懐石をしつらえる。余命いくばくもない娘の祝言も計画される。「青嵐」今でいう、白血病にかかった娘のために、祝言を上げようとする家族。お力達もできる限り協力する。
<12>「芙蓉の涙」幾千代の愛弟子・幾富士が診療所に担ぎ込まれる。出産間近だったのだが、おなかの中で子が死んだ。幾千代は、つきっきりで看病する。「こぼれ萩」月見の季節、旗後茶屋おりきも、予約客で一番殺到する季節。空きができたら是非と三婆が依頼するが、とても空きは期待できなかったが、悲しい知らせ。ついに余命わずかと思われたこずえが危篤に。席は空いたが思いは複雑。「色鳥」鈴ヶ森で火あぶりの刑が処せられた。茶屋でも旅籠でもその話題で持ちきりに。けれど、かつて幾千代の朋輩の娘だったことを知り、その気持ちを思う。八百屋お七の物語とともに。「夕紅葉」茶屋に置き去りにされた兄妹。乳飲み子と5歳の二人、ようやく探し当てた父親は、子供がいなくなったことも気づかなかった。おりきが引き取ることに。
<13>茶屋と旅籠、そば屋、それに加えてみなし子園まで面倒を見るおりき。「泣きのお銀」10年前に足を洗って息子の世話になっていた掏りのお銀が、品川に現れる。金に困っていないといい、おりきのみなし子園の援助をしたいといってくるが。息子の店はすでに潰れていた。「涙の星」岡引きの亀蔵の姪、みずきが大やけどを負う。「哀れ雪」板前の巳之吉の京都での修行時代にできたという子供が尋ねてきた。おりきの心は。きやりとする。ともかく、京の知り合い似たデマで、それは誤解とわかるが。「妻恋」茶屋の女衆・おまきに縁談が舞い込む。おりきの家族とも思う人びとたちの日常。
<14>「春ゆうべ」絵師の弟子として旅立っていた三吉が返ってくる。その姿を見送って亡くなった善吉の墓参りもかねてだ。1年4か月ぶりの再会。善吉の墓の前で手を合わせる。「島雲に」茶屋おきちに併設されたみなしご園に寄付してくれたお銀の息子健吉は、お銀が摺りだったことは知らないが、母に代わって読み本などを届けてくれる。そして、園児の一人おいねを引き取りたいと申し出る。「春の霜」やっと宴席に復帰した幾富士だが、同輩が見受けされたことにショックを受ける。そんな中、茶屋で盗難騒ぎが。新しく雇ったおなごが疑われる。「品の月」一見の客は止めない旅籠おりきだが、見習い番頭の見知りということで泊めたがどうも雰囲気が怪しい。年の差があるのに同室で、今宵が最後との雰囲気も。
<15>人が亡くなり、新しい出会いがあり、また戻ってくるものもある。「極楽日和」彦蕎麦のおたえが亡くなる。孫のおいねの悲しみ。でも、おいねもおたえもその死を覚悟して生きてきたのだ。「茅の輪くぐり」やっと春治の子供たちに受け入れられるようになったおまき。ついに結婚と言うところに、春治と別れて子供たちを置き去りにした女が現れる。「あやめ草」洗濯女のお留婆さんが腰を痛める。後継者をと雇うが皆追い出してしまう。婆さんには思うところがあった。「雨の月」医者の素庵の姪で、あすなろ園を運営してくれる貞乃の前に昔分かれた恋人が現れる。
<16>子供は育ち、代は変わる。それを家族として見守るおりき。「凛として」三婆の宴の一人、おふなが亡くなる。83歳としては健啖家ではあったが、最後まで凛とした姿を見せて亡くなる。その葬儀には彼女を慕うものが多く表れた。「紫苑に降る雨」茶屋女となった百代の夫が亡くなる。当然の結末とはいえ、百代の心も揺れる。「雪見月」亀蔵が孫とも思うみずきの帯解き(七五三の祝い)、おまきが嫁入った位牌師の連れ子の3番目の男の子の祝いとまとめて八文屋でおこなわれたが、おりきが送ったおまきの晴れ着はなかった。新しく母になった思い。「霜の声」茶屋女のおみのの兄・才造が久しぶりに訪ねてくる。亀蔵の後押しで漁師になっていたのだが、また何か問題を起こしたのか。
<17>新しい命の誕生もあるが、家族とも思うものがまた一人な亡くなる。「嫁が君」亀蔵の義妹こうめの出産。みずきは喜ぶ。正月の日に生まれお初と名付けられる。「鬼やらい」小梅の出産で、手の足りなくなった八文屋では新しい小女を雇うことになる。一方14年前に助けた女お半が、久しぶりに訪ねてきた、「花篝」田沢屋が連れてきたのは、訳ありそうな男女。その生末を聞く。新しく品川で、足袋屋を開くという男女。「堅香子の花」茶屋の古参のおよねが倒れた。急遽医者の素庵のもとに運び込むが、卒中だという。安静を命じられるが、ひそかに茶屋に戻り。
<18>兄妹の思い、兄弟の思い。母子の思いなど、お互いに思いあう人々の物語。「茅花流し」あすなろ園の孤児をもらいたいという夫婦が現れた。けれど気に入ったのは3歳の茜。けれど茜には7歳の兄がいる。「ひと夜の蛍」堅物として知られる煙管屋の主が、娘の三味線の師匠に惚れた。けれど同時に妻も身ごもった。揺れる心。「君影草」おみのの兄・才造が再びおりきを訪ねてきた。今度は何を。そして常連の吉野家が宿泊するのだが、何か屈託を抱えているようだ。「夕虹」25年も前に分かれた子供が訪ねてきたが、その時およねはもう亡くなっていた。4年前には、父の形見のお包丁を黙っておいて去って行ったが、3歳の時に自分を置いて出ていったおよねにわだかまりがあったのか。
<19>「掌の月」常連の京の呉服問屋幸右衛門の弟が亡くなった。30年以上前に出奔し、20年前には追い返したが、やはりその死は悲しい。「指切り」後添いに入ったおまきの4男が、行方不明に。やっと、子供たちとの絆もできたというのに。「紅葉の船」以前、この店で生まれた子供との再会。倒れこんだおなごを助けたというだけだが、それでも絆は結ばれる。「冬惑い」出張料理を頼まれたのだが、そこに給仕として芸者の幾富士が頼まれる。
<20>この巻の最後では、おりき、ゆかりの人たちが多く亡くなる。シリーズも最終巻近く、著者も、終活を考えているのか。「由縁の月」芸者幾千代は、娘とも育てた幾富士との別れが悲しい。「初扇」16年前に不義で殺されたおなごの思い人と思われる幽霊が現れる。16年前の真相は。「はかな雪」親に無理心中を強いられた、二組の男子と女子が、おりき茶屋のあすなろ園に拾われる。自分だけ生きていていいのだろうかという子供は涙をこらえる。「春疾風」春の嵐の中に漕ぎ出した島帰りの才造、口うるさいが優しい洗濯女のおとめ婆さんは、受けだしたさつきの隣で眠るように死んでゆく。そして、今日の染物屋・吉野家のの主の訃報も伝えられる。おりきを心から支えてくれた吉野家は、長年行方不明だった弟の葬式を出した後、病を得てひっそりと亡くなったという。
<21>大事な人たちを亡くしても、家族(立場茶屋おりきの皆)のため、立ち止まることはできない。「佐保姫」一度は心が揺らぎ、店を出ようとした堅物屋の主の次女や、まさかと思った主の隠し子の祝い善を整えることになった。ともに名前は佐保。その親子の絆がいい。「えにし蕎麦」隣の彦蕎麦の揚げ方と、小女が辞めた。過去を知り、居てもたってもいられなくなったのだろう。けれど人で不足をどうしたらいいのだろうか。「いとくり草」春次に嫁いだ子ができたのだが、なさぬ仲の4人の子供たちに、今までとうりに接することができるのだろうか。一方あすなろ園でも諍いが。実の子と分け隔てなく接することの難しさ。「空蝉」三婆の一人、七海が亡くなった。その知らせもなかったが、七海の屈託とは。でもうれしい知らせも、三吉が久しぶりに帰ってくるという。
<22>「名残の扇」芸者の幾千代は、子とも思っていた幾富士が大店の息子に嫁ぐことに、寂しさを覚える。「一流の客」8年前、”旅籠茶屋おりき”に泊まることができなかった浪人が、願いが叶ってここにある。「残る秋」残り少ない人の婿となり、家を継いで、のち添えを迎え、めでたく懐妊したというのだが。まだ気持ちは収まらない。「巴待ち」目出度い巳年の巳の月、岡っ引きの亀蔵はほろ酔いで、おりきにやってくるが、大番頭は、女将のおりきと、板頭の巳之吉の思いを訪ねる。
<23>「冬濤」年が明ければ15歳になる勇次、いまだにいたずらは収まらないが、何になりたいかと聞けば、父親と同じ海とんぼ(漁師)に成りたいというが、独立心旺盛な勇次のこと、簡単には決まらない。「夕顔忌」新しく番頭になった潤三が持ってきた仕事は、茶室の初窯。手伝いに、新入りが起用されたことで天狗になっていた蓮次は面白くない。「鷽姫」大名家に輿入れが決まった娘を連れて旅籠に泊まった商人だが、何か問題を起こしそう。「すみれ野」三吉の結婚の知らせが入るが、おりきは行けそうにない。代理におきちを遣わそうとするが、不満そうな顔。3代目も継ぐのは嫌だという。
<24.幸せのかたち>「葉桜の頃」絵師として京都に行った三吉が、京で結婚することに成った。三吉の双子の妹のおきちは、その結婚式のために京に向かう。「十一」おさわの営む”八文屋”に浅蜊を売りに来た少年が、店の前で倒れる。医者の見立てでは、先の長くない白血病ではないかと言う。養母には疎んじられて、”十一”といい加減に名付けられる。おさわは彼を引き取る事に。「幸せのかたち」京に行ったお吉はなかなか戻ってこない。おさわは息子の死を看取る事もできなかったので、十一の最期まで幸せを見つけて欲しいと願う。また茶屋の女衆の古手が見出した幸せの形。「河鹿宿」おきちは3代目女将に成りたくなかったのだろうか。手不足に成ったおりきは、新しい働き手を捜す。そんな時、尼寺で育てられた17歳の娘を引き取る事に。
<25>ついに完結。長いシリーズだった。「木染月」京に行っていたお吉が、5か月ぶりに吉野家の若旦那と戻ってくる。なんと結婚するという。「秋の行方」彦蕎麦の女将、おきわが板頭の修二からプロポーズされる。「蜜柑」八文屋に引き取った十一がついに生けなくなる。おさわは彼に蜜柑を食べさせる。「永遠に」三代目候補の里見も、巳之吉が後を継がせようとする福治も、順調に成長してゆく。2人を見守るおりきと巳之吉。ついに完結。
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他にも多数出品しています。ぜひそちらも見てください。
個人の蔵書なので、すべて一読
はしています。すべて自分で読むために購入した本です。
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