宗達光琳派扇面画集・2冊/定価25000円/カラー100図版/昭和40年/俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一・鈴木其一/扇形の画面に描かれた絵の総称
商品説明
宗達光琳派扇面画集・2冊/定価25000円/カラー100図版/昭和40年/俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一・鈴木其一/扇形の画面に描かれた絵の総称
昭和40年上下2冊100図版解説付属30cm×45㎝の大判です。重さ約6.15kg部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。
本集に収むる扇面画は、上記屏風の画扇中より、特に其粋抜きたるものにして、物語の人物画あり、花弁草木の図あり、就中草花は宗達の最も得意とせる所にして、揮〇縦横、筆姿微妙、写生の奥に達し、更に写生を出でて写意の極に至る。以て其の霊腕妙技を見るべきなり。
物語絵のみではない、草花絵においても、名所絵においても、この方法論は一貫して守られている。さらに、宗達が屏風画を描く場合にも、同様の方法論が屏風画構成の原理 として用いられていることも、私はかって指摘したが、こうした方法論によって、宗達は大和絵を復興して装飾画の新 しい世界を確立したと言われる評価を得ているのである。
また、色彩における特色は、繊弱化した室町大和絵の弱々しい色彩を、豊饒で重厚な色感をもって塗り直し、色面の 輝やきによって絵をいかにも町衆文化にふさわしい絢爛さに甦らせた点に求められる。宗達以前の町絵師によってすで に崩していたこの方向は、宗達によって高い成熟と洗練に達したのである。色彩ばかりでなく、金銀の泥や箔の使用に よって宗達はそれを推進し、たらし込み、ため込みの手法を有効に使用して芸術的な深みを添えた。小さな扇面画の画 面か、ひろびろとした空間に変り、豊かな量感で見る者を魅了する秘密のひとつがここにあるのだ。「扇は都俵屋」と 称されたのは当然であった。
こうした卓越した扇面画の描きかたから、逆に宗達は扇面画の専問画工であったのではないかという推定も成立つ。
それを俵屋が扇面工房であったと考える裏付にすることも可能なのであるが、扇面画以外の分野にも多くのすぐれた仕 事を残している俵屋は、扇屋を含む絵屋であったとしておくのが妥当であろう。ただ宗達は、その経営者であると同時 に画工でもあったわけで、富豪の手すさびに扇や色紙や屏風を描いていたのではないことは確かである。職人の腕と芸 術家の才能を併せ持った稀有の天才。それが宗達である。
宗達に直接指導され、あるいはその没後も扇面画を製作し続け た宗達派の人びとは、宗雪以外に名を確認できない。 工房としては当然のことであるけれども、これが後世を惑す原因となって、宗達派の扇面画を整理しようとする研究者 を悩ましている。しかし、宗達によって確立された扇面画の世界が、宗達派の人びとによって世にひろまり、後に伝えられたことを考えると、この宗達工房の意義はきわめて重要と言わねばならない。
さて、宗達派の扇面画のあとを受けて、光琳もまた独自の扇面画を創造した。宗達のそれを扇面画の古典とするなら は、光琳の扇面画は近代的な感覚によって画面を処理した新しい試みに満ちている。光琳は宗達と違って、扇面製作に
濃い関わりあいを持つ画家ではなかった。その生家は雁金屋という呉服商であるから、衣裳の工芸意匠については独自の感覚を培って、 たけれども、それはどちらかと言えば団扇形に向いている構成を持つものである。光琳の団扇画にお けるすぐれた構図や図柄はよくこのことを示している。しかし、そうした構図感覚は、扇面の処理においても立派に活 用できるものであった。放射性とか進行性とか彎曲性とかの扇面性を、宗達よりいっそう複雑に按配して、斬新な画面 を作り出すことに光琳は成功している。ただ、その成功の率は、他の作品におけると同じように、かなりのむらがあることは光琳の画家としての質によって止むを得ないところであろう。本画集に収めた光琳の扇面画に、目をみはるよう な新鮮なものがあるのと同時に、平凡な作もあるといった状態は、やはり扇面画工としての腕によるのではない光琳の、 芸術家的気質のあらわれではあるまいか。
光琳の扇面画の代表作と知られるのは、大和文華館蔵の手宮に貼付けた数枚の作品である。物語絵、草花絵、人物絵、 風景絵などさまざまの題材を、着色と墨とで描いたすぐれた出来栄えのものである。このほかに、屏風貼交のものや個 々に伝わるものなど、かなりの作品がある。描かれた草花や人物が、どのように宗達を学び、また宗達と異なるかは興 味深い観察点であろう。
琳派の人びとのうち、芦舟の扇面はまだ見たことがない。乾山と伝えるものはかなりあるが、真筆と断定し得るもの はきわめて少く、始興は数多いけれどもさして優作がない。やはり抱一が質量ともに抜きんでていると思われる。抱一 の扇面画は、書を併うものが多く、書と絵との配合と、俳画風な面白味によって愛すべきものである。
何冷や其一や芳中や抱儀といった人びとの扇面画を紹介できたのは、この画集の大きな成果であったと自負している。 ことに、其一が並々ならぬ才筆の画家であること、芳中が傍若無人と言えるような画境を展開していることなどが判明 したのは、琳派研究に携わる者にとって悦ばしい発見であった。
本画集は収録を百図に限定したため、また撮影の条件と時間を得られなかった作品も少くなかったため、宗達光琳派 扇面画のおよそのアウトラインを探ることしかできなかった。他日、収録洩れの秀作を紹介する機会を得たく思うが、 なお未紹介のすぐれた扇面画は多く世に隠れていることであろう。大方の御示教をお願いする次第である。
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